ナツメグ/ Nutmeg / ニクズク

甘美なスパイス ナツメグ

ナツメグの原産地はインドネシアのモルッカ諸島。ニクズク科の熱帯性の常緑高木の一種で、約20mもの高さにまで成長します。あんずに似た固く多肉質で黄色い果実をつけますが、成長が遅いので植えてから約7年くらいでようやく結実します。成長した木からは2000個もの果実が収穫できると言われています。

果実から2つのスパイスがとれる珍しい植物で、仮種皮と呼ばれる部分は「メース」になり、仮種皮(メース)に包まれた濃褐色の殻を取り除いた部分(種子の“仁”と呼ばれる部分)がスパイスの「ナツメグ」として使われます。やや甘くスパイシーで刺激的な強い香りがあり、パンやクッキーに入れるなどの香りを引き立たせるような使い方が一般的です。また、臭い消しとしても使え、特に肉料理との相性が良いため、ハンバーグやミートローフなどのレシピに使われることが多いです。

ナッツメッグ、ナツメッグ、ナットメグとも言われます。

ナツメグの歴史

インドネシアのモルッカ諸島を原産とするナツメグは、遥か遠くからヨーロッパに渡るまで大変な労力を要したため、古くから大変高価なものでした。中世ヨーロッパでは、たった1ポンド(約500g)のナツメグで、13世紀末のイギリスでは羊3頭、14世紀末のドイツでは7頭の牝牛と交換できたと伝えられています。

同じ木から採れるナツメグとメース

16世紀末から17世紀にかけて東洋への航路が開けた後は、オランダがナツメグとメースを独占していました。しかし、その頃は香辛料に対する知識が低かったため、当初この2つの香辛料が同じ木の実とは知らなかったため「ナツメグの樹を全部切って代わりに値のはるメースを植えるように」と指示したというエピソードも残っています。

世界の4大スパイス

古くから世界で広く珍重されてきたことからナツメグは、コショウ、クローブ、シナモンとともに、世界4大スパイスと呼ばれることがあります。

 

ナツメグの効果・効能

甘い芳香と独特な辛みが混じりあった香辛料で、火を入れることで薫りが引き立ちます。昔から漢方としても使われ、痰を取り除く、抗炎症作用、吐き気止め、消化促進、食欲増進などの作用があるとされています。また、体を温める効果があり、冷え症にも効果的です。

 

抗炎症作用、吐き気止め
消化促進、食欲増進
整腸作用、腹痛、下痢止め、便秘改善
発汗作用、冷え症改善

 

ナツメグの毒性

生のナツメグには毒性があり、一定量以上摂取すると脳神経系を刺激して、幻覚症状を引き起こすと言われています。マリファナの幻覚症状とよく似ていて、5g以上の摂取で、これらの副作用が発生すると言われています。
5gというと簡単に摂取できそうに思われますが、通常の調理で肉1kgに対して~0.5gほどです。小さじ1でナツメグパウダーは1.5グラムですので、通常の摂取では問題ありませんが、使いすぎに注意しましょう。