シナモン / Cinnamon / 桂皮

シナモンという甘い香りのする香辛料

シナモンとはインド南部からスリランカが原産と言われるクスノキ科の常緑樹で、その樹皮をはがし乾燥させたものです。世界最古のスパイスとも、スパイスの王様とも言われる香り高い香辛料です。(余談ですがブラックペッパーもスパイスの王様と言われていますし、カルダモンはスパイスの女王と言われています。)
日本名ではニッキとも呼ばれ、漢方の生薬としては桂皮(ケイヒ)とも呼ばれます。独特の甘い香りとかすかに辛味を感じます。様々な品種があり、主にスリランカで生産されている「セイロンシナモン」と、東南アジアでの生産される「カシア」が代表的です。

 

シナモン・カシア・ニッキの違い

厳密に言う場合、シナモンとカシアは区別されることになります。シナモンと呼べるものはスリランカやインドなどで作られているセイロンシナモンのみで、セイロンニッケイ(セイロン肉桂)という木から採られたもののことをさします。セイロンニッケイの樹皮を剥がし、コルク層を取り除き何枚か重ねて丸めて乾燥させるため、手間がかかります。上品で繊細な香りが特徴です。
日本で一般に多く流通してるものはカシアの方で、東南アジアを中心に多く栽培されているシナニッケイ(シナ肉桂)の木を使います。セイロンシナモンよりも色が濃く肉厚で、香りも濃厚で後味にかすかに辛味を感じます。製造過程での樹皮の取り扱いが異なり、セイロンシナモンと比べ手間がかからず製造できるため、安く流通しています。
ニッキはカシアとほぼ同じニッケイの木の根を使います。セイロンシナモンなどに比べると強い甘い香りと辛味をもつのが特徴です。京都のお菓子で有名な八つ橋に使われていることで有名です。

 

シナモンの歴史

世界最古のスパイスともいわれ、紀元前4000年頃からエジプトでミイラの防腐剤として使われていたそうです。また古代ギリシャでは、その甘い香りから「愛をかきたてるもの、深い愛情を示したもの」として、特に王侯貴族に重宝され、最高の贈り物とされていたそうです。シナモンの学名はヘブライ語、アラブ語の「香り高いスパイスの木」を意味する「amonmon」からきています。
日本には8世紀(749年頃)までに、胡椒、クローブ、香木などとともに中国産のシナモンが渡来していたことが正倉院に生薬として保蔵され残っていることで明らかになっています。樹木が輸入されたのは享保年間(1716年から1735年)の頃で、そこから急速に全国に広がりました。

シナモンの小話

紀元前5世紀ごろ活躍したギリシャ人ヘロドトスは、アラビア人がシナモン、カシアを手にいれる方法を次のように書き残しています。

(要約)『カシアを集める際は、牡牛など獣の皮で体と顔を覆い、目のところだけ穴を開けた格好で捜しに行く。カシアが生えている湖の周辺には、こうもりに似たどう猛な動物がたくさん棲んでいるからだ。一方シナモンはどこの国で採れるかアラビア人は知らない。ただもっともらしい話として、大きな鳥たちがシナモンの枝木をどこからか運んできて、その枝木で切り立った岩壁に巣を作ると言う。そこで彼らは、死んだ牛やロバの肉片を巣の下へ運び、少し離れた所で待機する。すると貧欲な鳥たちは、その肉片をわし掴みにして、自分たちの巣へ運び上げる。いつしかその巣は、肉片の重みに耐えかね壊れて地上へと落下する。そこへ駆け寄り、落ちてきたシナモンの枝木を拾い集めのである』と。

シナモンやカシアは中国、タイ、インドネシア、セイロンなど東洋諸国にしかありませんでした。そのため陸路のシルクロードや、アラビア人が運び人となった「香料の道(スパイスロード)」、マレー半島を回ってインド洋、アラビア海、紅海へと至る海上ルートなどを経て、大変な苦労をして地中海沿岸へと運ばれていました。アラビア人たちは、このような作り話を広言することで、香辛料の供給はいかに危険や困難がともなうかを誇張したり、香辛料の産地を明さないことで、値をつり上げていたと考えられています。

 

 

シナモンと相性の良い料理

シナモンはお菓子やコーヒー、紅茶などと相性が良く、カプチーノ等の飲料やアップルパイ、シナモンロールなどの洋菓子の香り付けによく使われます。また、肉との相性も良いため、豚の角煮、鶏の煮込み、ひき肉料理などにも利用されます。 その他、カレー粉やソースなどの原料にも用いられ、インドカレーに欠かせない香辛料ガラムマサラの主要な成分でもあります。また、インドではシナモンの葉が、ローレルのように煮込み料理に利用されています。このことから、シナモンの葉は「インディアンベイリーフ」と呼ばれることがあります。

 

シナモンの効果・効能

健康や美肌、ダイエットにも

シナモンには健康や美肌、ダイエットなどに役立つ効果がとてもたくさんあります。

  • 抗菌、防腐効果
  • 血流改善、発汗効果
  • 糖尿病予防、改善効果
  • 消化促進効果、むくみ予防効果
  • 整腸効果など

その中でも特に女性に注目されているのが、血流改善、発汗効果です。シナモンにはTie2(タイツ―)という血管細胞内の受容体を活性化する効果があるそうです。このTie2を活性化することにより、細胞組織を活発にしたり毛細血管の老化防止、修復をすることができます。これにより、肌のシミやシワ、たるみに効果があるため、美容・美肌にとても注目されています。また、血の巡りが良くなることで、むくみの改善にも効果があります。

 

香りの持つ効果

シナモンの香りにはリラックス効果があることが認められており、アロマテラピーでも疲労やうつ状態の症状の改善などに用いられています。また、記憶力を高める働きがあると言われています。仕事で集中力を高めたいときや試験の勉強の時などに活用してみると良いかもしれません。
他にも、シナモンの香りに含まれるシナムアルデヒドという成分は、実は凄い防虫効果があるそうです。シナモンの香りを漂わしておくと部屋の中に虫が入って来ないと言われています。この防虫効果はとても強力で、市販の虫よけスプレーよりも効果があるらしいです。ただし残念ながら、この防虫効果は長持ちしないので、実際に虫よけとして使うには持続性の観点から市販のものを使う方がよさそうです。