強い香りのスパイス クローブ
クローブとはインドネシアのモルッカ諸島原産の熱帯性常緑樹の1種(フトモモ科の植物チョウジノキ)で、スパイスのクローブはその開花直前のつぼみを乾燥させたものです。そのつぼみが「釘」のような形をしていることから、フランス語の釘「Clou」と同じ言葉を語源とする英語「Clove」と呼ばれるようになったそうです。中国語でも、クローブの見た目から、釘の意味を持つ「丁」が当てられ、「丁子(ちょうじ)」や「丁香(ちょうこう)」などと呼ばれ漢方薬としても重宝されています。
バニラに似たような甘さも感じさせながら刺激的でさわやか。その独特の香りはスパイスの中でもっとも強く、肉の臭みを抑えます。また香りの強さ故からか、中世のヨーロッパでは魔除けとしても使われていたそうです。
チョウジノキは常緑樹の中高木で高さが10メートルほどにも成長します。花弁は高い場所に位置し、昔はやぐらなどを建てて手摘みしていたそうです。少しでも開花してしまうと香りが極端に弱くなってしまうそうです。
クローブの生産地
現在のクローブの主な生産地は、マダガスカル、タンザニア、ブラジル、インドネシアです。最も生産量が多いのはインドネシアであり、年間約7万t~8万tのクローブが生産されている一方で、世界最大の消費国でもあります。
クローブの歴史
クローブについての最も古い記録として、ヒンドゥー教の医学において内科・外科の処方に使われていたことや、中国の書物である「三省故事」には、漢(紀元前202年~西暦8年)時代、宮廷に仕える人々は口の中をクローブで清めてから皇帝の前に出ることが義務づけられていたという記述があります。
ヨーロッパにも2世紀頃には伝わり始め、6世紀頃には貴族たちの間で珍重されるようになりました。古くは原産地でクローブの価値が把握されておらず、そのため中国商人たちが長く原産地を秘匿したまま交易商品として取り扱っていたそうです。大航海時代にポルトガルの航海者であるマゼランが、スパイスの産地までの航路探索を開始し、彼の後を継いだ船員たちがクローブの実をスペインに持ち帰ったことにより、莫大な利益がもたらされたといわれています。
日本にも5~6世紀には伝来していたようで、正倉院の宝物のなかにも当時輸入された丁子が保存されています。刀のサビ止めなどに用いられたと伝えられています。
クローブを使った料理
クローブは強い芳香を持つスパイスで、臭みを消す作用があるため肉料理や内臓料理によく使われます。パウダーのものはハンバーグなどのひき肉料理やレバーペーストなどに混ぜ込んだり、ホールはポトフなどの煮込み料理に入れるか、肉に刺して一緒に焼いたりする使い方もします。直接口に含むとしびれるくらいの強い刺激があるので、入れすぎないように注意しましょう。(ポトフなどでは3~4本くらいで十分です。)
紅茶を使った飲み物「チャイ」では、カルダモンやシナモンスティックと共に使用したりします。また赤ワインを使った「サングリア」は、クローブをはじめフルーツやコリアンダーシードを使って作られます。甘いものともよく合い、お菓子やバン、クッキーやプリンの生地に混ぜ込んだり、フルーツタルト、アップルバイ、ジャム、コンポートなどにも使われます。
クローブの効果・効能
クローブは和名では、丁子(チョウジ)とよばれており、漢方薬としても重宝されています。その効能は多く、胃腸の消化機能を促進したり、嘔吐や下痢、シャックリ、吐き気を抑える効果や体を温めたりする効果があります。
また、クローブは歯が痛いときにも使うことのできる香辛料で、ホールのものを噛んでいると歯の痛みが抑えられると言われています。
- 消化不良・下痢
- 食欲不振・吐き気
- 便秘・お腹のハリ
- 冷え性・低血圧
- 歯痛・歯肉炎・口臭
- 虫除け・防カビ
特徴的な香りの成分
クローブは香辛料として使う以外にも、その香りの成分であるオイゲノールには、殺菌・防腐作用がある他、弱い麻酔・鎮痛作用もあり、歯痛の鎮痛剤としても使われることがあるそうです。またこのオイゲノールの香りはゴキブリなどの害虫が嫌うと言われていて、台所やゴミ置き場などに置くだけで効果があるとされています。
台所のお守り・ポマンダー
ポマンダーとは、クローブをレモンなどの柑橘類に刺してつくる芳香玉のことです。
ヨーロッパでは、ポマンダーを風通しの良い所に干しておくことにより、クローブに含まれる成分が細菌や虫を寄せつけず、防腐作用によって中の柑橘類が腐らずに良い香りを放つため、「台所のお守り」として生活に取り入れられています。